Aremo Coremo

食べること飲むこと歌うこと生きること、オンナの戯れ言ブログはいかが?

黒猫は不吉じゃないよ

今週のお題「ねこ」

 

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20XX年7月下旬とある土曜日。

久しぶりに遠方から遊びに来た夫の妹が、街に洋服買いに行きたいと言うのでつきあうことにした。

身支度して家を出て、二人並んで地下鉄の最寄り駅へ向かおうと歩き出した直後「なんか猫の声が聞こえる」と妹が言い出した。

「え?どこ?」

道路を挟んで向かいの家の物置とすぐそばに置かれた木材の山の隙間辺りからか細い鳴き声が確かに聞こえてきた。

近づいて腰をかがめながらそっと覗いてみると、小さな黒猫が何かに挟まって動けないまま必死に鳴いている姿が見えた。

その隙間を通り抜けようとして、ビニールひもの輪になった部分に首を突っ込んでしまい、それが引っかかって前にも後ろにも動けなくなってしまったようだ。

「取ってあげるからちょっと待ってね」

怖がらせないように声をかけながら、ひもが子猫の首に食い込まないように注意しつつ、ゆっくりとだましだまし体を外してあげた。

「うわぁ…」

子猫は片手に乗るほど小さくて、軽くて、でもお世辞にも可愛いとは言えなかった。

片目しか明いておらず、もう片方は不格好に閉じたまま醜く大きく膨らんでいた。

救出したらすぐ離してあげようと思っていたのだけど、乳離れしてなさそうなこの子猫とこのままバイバイしても、親猫と会えないまま弱って死んでしまうような気がしてならなかった。

「お母さんどこ行ったの?」

周りを見回すも、親猫や兄弟猫らしき猫の姿は見当たらない。

瞬時、私は考えた。

野良猫なんだし、可哀そうだけど自然の法則があるはず。

可哀そうだからって、なんとかしてあげられるの?

この片目がつぶれて醜く膨らんだ、まるで墓場の鬼太郎のような薄気味悪いとも言える見てくれの猫の一生の責任を持つ覚悟があるの?

「ごめん、この猫病院連れてくから一人で買い物行ってもらってもいいかな?」

妹とはそこで別れて、私は子猫を連れて家に戻った。

当時我が家でペットは飼っていなかったので、ゲージなどあるわけもなく、小さなお菓子の空き箱に子猫を入れて動物病院に連れて行くことにした。

車は夫が外出で使用していたので、子猫を入れたお菓子の箱の蓋を少しだけずらして、往来の車の音に怯える子猫に「大丈夫だよ、なんも怖くないからね」と声をかけながら、両手で抱えて自宅から徒歩10分位の動物病院へ歩いて向かった。

病院の受付で「お名前は?」と聞かれたので「もねこです」と答えると、「あ、いえ、猫ちゃんのお名前です」と笑われてしまったけれど、道端で見つけたので名前はありませんと伝えたらそのまま受け付けてくれた。

順番が来て診察室で先生に診てもらうと、心配だった片目は目やにが固まって開かなくなっていただけで、そのまま目やにが溜まって膨れていたのを綺麗にしてもらったらごく普通の可愛らしい子猫の顔になったので、とても嬉しかったのを覚えている。

でも野良猫だから、HIVや心臓が弱っていたり、何らかの病気をもう持っている可能性がなくはないから、長生きできるとは限りませんよとも言われてしまった。

先生に「どうするの?これから飼うの?」と聞かれたけど、夫にまだ何も伝えてなかったし私の一存で決めることもできないから、「しばらくうちで面倒みます」としか言えなかった。

オス猫だった。

目薬を処方してもらい、診察料を支払って、またお菓子の箱に入れた子猫を両手で抱えて家に帰った。

家に入る前、子猫のいた辺りで親猫が探してないか見てみたけど、残念ながら見当たらなかった。

慣れないことの連続に怯えたのか、箱から出してあげると子猫は小さく震えていた。

私は子猫を膝に乗せて、両手で包んで「大丈夫だよ、なんも怖くないよ」と撫でてあげることしかできなかったけど、私があなたを守ってあげるからねって気持ちが同情による思いつきではなく、心に誓う確信だっていう覚悟が決まった瞬間でもあったような気がする。

帰宅して驚く夫に事情を話し、迷惑かけないからこのまま飼わせて欲しいと懇願。

夫ももともと猫が好きで、実家でも自分が公園から拾ってきた猫を飼っていたし、お互い猫が好きという共通点もあって結婚したようなものなので、難色を示されてもNOはないだろうなと思っていた通り、さっさと元の場所に置いてこい!とは言われなかった。

かくして子猫は我が家の猫となり、みぃみぃか細い声で鳴くのでミンと名付けた。

全身真っ黒だけど、めくると根元はまんべんなく白い不思議な黒猫。

黒い毛並みにうっすら顔にはトラ柄や体にはヒョウ柄がグラデーションで見えたりして、病院のカルテには「洋猫MIX」と種別が記された。

一週間もすると我が家にも慣れ、長い廊下を行ったり来たり一人で運動会。

お風呂もトイレもどこに行くにもついてきて、寝る時も最初はゲージに入れてたけどすぐ一緒に寝るようになった。

あれから十数年、すっかり年をとっておとなしくなったけど、ミンは大切な家族。

コウノトリが来ない私たち夫婦にとっては我が子そのもの。

嬉しい時、楽しい時、つらい時、悲しい時、いつもミンに癒されて過ごしている。

今は訳あって私の実家で暮らしてるけど、病気がちな両親を私の代わりに癒してくれてる。

帰省した時にはニャーッって走って出迎えてくれるし、離れて暮らすようになった私を恨まずにべったり甘えてくれる。

黒猫は不吉だって言う人もよくいるけど、そんなこと信じないで欲しい。

 

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真っ黒だから写真映えはしないけど、見ているだけで、いてくれるだけで幸せな気持ちになれるから。

 

なんて今週のお題にちなんで、愛猫ミンとの出会いを振り返ってみました。

 

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Il gatto miagora.

イル ガット ミアゴーラ

 

イタリア語で、猫が鳴く。

アゴーラって、ミャーゴ、ゴロゴロ…日本語の猫を表す言葉にもなんだか似てますよね。

 

いまさらですが、もねこって名前には日本語でねこ、ツイッタアカウントのmoneco_gattinaにはイタリア語で子ねこってつけるほど猫を愛してます。

 

gattinaって男性が女性を可愛らしいとか少しセクシィと思う時の呼び方、こねこちゃん的な意味合いもあるらしいんですけどね。

好きな人にはそう呼ばれてみたいという願望も含まれていたりいなかったり…

 

媚びることなく、そこに存在してるだけで可愛らしく愛おしい猫に惜しみない愛を捧げつつ、死ぬときはフラッと姿を消す生きざまも眩しいと思える今日この頃。

 

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私も黒猫になりたい。

疎まれてもいい、わかる人だけわかってくれれば。

 

 

AremoCoremo

もねこ